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監修:滋賀医科大学 脳神経内科 教授 漆谷真先生
砂川市立病院 脳神経内科 山内理香先生

2021.04.30

  • 連載
  • 病気のこと

ALSの災害対策
-起こりうる災害に対して
今から備えられること-
連載:セミナーレポート「ALS Café web」 vol.4

東邦大学医療センター大森病院
ソーシャルワーカー 松本 幸則 先生
東邦大学医療センター大森病院
ソーシャルワーカー 松本 幸則 先生
目次

これから起こりうる災害について考える

豪雨や洪水、地震、感染症といった自然災害、広域火災や電力事故などの大規模な人的災害は、いつどこで起きてもおかしくありません。

大規模災害では、行政や医療機関などが被災し、機能が麻痺することもあります。
特に、高齢な方や障害のある方、その周囲の方々はより念入りな災害対策が必要になります。
ここでは、今から備えられる防災・災害対策ついて、一緒に考えていきたいと思います。

過去の災害から学ぶ

時間的な余裕のある時や防災訓練などの際に、今までの災害でどのような対応がなされてきたか、一度目を通しておくことが大切です。

例えば、「難病情報センター(https://www.nanbyou.or.jp)」では、被災により被保険者証等の関連書類を紛失した場合の通院方法などのお知らせが更新されています。
また、コロナ禍では、厚生労働省の通知を受けた各自治体から、医療費受給者証の有効期限の延長のお知らせなどが出されています。

災害時に慌てることのないよう、通院している病院ではどうか、交通機関はどうかなどについても、予め情報収集を行っておくことが重要です。

災害対策の3つの要素

東日本大震災の際、大規模広域災害への災害対策として必要と強く認識されたのが、災害対策の3つの要素、自助、共助、公助です(図1)。

図1:災害対策の3つの要素図1:災害対策の3つの要素
図1:災害対策の3つの要素
参考:内閣府防災情報のページ「平成30年版 防災白書 第1部 第1章 第1節 1-1 国民の防災意識の向上」
(http://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/h30/honbun/1b_1s_01_01.html)

自助は「自らの生命は自らが守る」ということです。家具の転倒、転落、移動防止対策を行うことや、住宅用防災機器を備えることなどが自助に当てはまります。

共助は「自分たちのまちは自分たちで守る」ということです。町内会や自治会等で防災訓練を実施する、地域に住む要配慮者を支援するための協力体制を作ることなどが挙げられます。

そして公助は「行政機関等が守る」ということです。各関係機関が連携した災害対策、対応力の強化を図り、自助・共助に対する支援を行います。

今から備えられること

それでは、今から備えられることを具体的にみてみましょう。

① 自助:自ら取り組む

まず、「自助・災害対策チェック」を行いましょう。
各自治体から発行されているパンフレットなどを活用してください(図2)。とてもわかりやすく、災害時に備えられることが掲載されています。

 図2:例 東京都大田区の防災パンフレット「わが家の防災チェックBOOK」 図2:例 東京都大田区の防災パンフレット「わが家の防災チェックBOOK」
図2:例 東京都大田区の防災パンフレット「わが家の防災チェックBOOK」
東京都大田区ホームページ(https://www.city.ota.tokyo.jp/index.html) 東京法規出版

災害時に備え、家屋や室内の危険箇所のチェックや、家庭内の備蓄品や非常時の持ち出し品のチェックを行いましょう。また、ライフラインや関係機関の連絡先、避難先も確認しておきましょう。そしてこれらに加えて、お薬手帳、健康保険証をひとまとめにしておくなどの工夫も必要です。

人工呼吸器などの医療機器においては、駆動時間を把握しておき、外部バッテリーや市販蓄電池を用意してください。一般的に災害発生後とりわけ72時間以内が生命の維持・救命において重要です1)。人工呼吸器を装着されているALS患者さんは、72時間程度は駆動が維持できるように、電源の確保をしておきましょう。
また、医療機器について至急問い合わせができるよう連絡先を確認し、先ほど紹介した各自治体のパンフレットなどに書き込んでおきましょう。

その他、災害時の医療機器の注意点や対策については、国立成育医療研究センターの資料「医療機器が必要な子どものための災害対策マニュアル」(https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/cooperation/shinsai_manual.pdf )にわかりやすく記載されていますので、参考にしてください。

1)西澤正豊. 神経治療. 2016, 33: 307–310.

② 共助と公助:みんなで取り組む

地域の課題は地域で解決する、これがとても大切です。
お住まいの地区の防災計画を知り、共に考えていく機会を持つようにしてください。

例えば、避難行動要支援者名簿登録制度※1を活用したり、災害時個別支援計画書※2を支援者と一緒に作ったりすることが有効です。これらを通じて避難情報、避難方法、避難場所などを確認していきましょう。

※1:「災害対策基本法」に基づき、災害時に自力避難が難しく、支援が必要な方々を、各市町村にてあらかじめ登録しておく制度です。詳細は各市町村窓口にお問い合わせください。
※2:災害時に避難支援が必要な方に対して、事前に必要な支援や事柄を示した個別の支援計画書のことです。作成にあたっては、各市町村の担当者又はコーディネーター(民生委員等)が中心となって、要支援者やそのご家族等とともに、具体的な避難方法等について検討が行われます。

③ ヘルプカードの活用

ご存知の方も多いかと思いますが、「ヘルプカード」を障害のある方が普段から身につけておくことで、緊急時や災害時、困った際に周囲の配慮や手助けをお願いしやすくなります(図3)。
災害発生時や避難場所に移った時の困りごとに対しても、必要なお願いを具体的に記載することで、お手伝いを得られやすくなり、また、声をかけてもらいやすくなります。

 図3:ヘルプカード紹介パンフレット(例 東京都福祉保健局) 図3:ヘルプカード紹介パンフレット(例 東京都福祉保健局)
図3:ヘルプカード紹介パンフレット(例 東京都福祉保健局)
東京都福祉保健局ホームページ(https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp)

地域力のUPが防災につながる

防災を通じた日頃のケア体制や、防災の自助・共助・公助を考えていくことは、厚生労働省が進めている「地域包括ケアシステム」を広め、育てることにもつながります。
「地域包括ケアシステム」とは、地域の高齢者が住み慣れた場所で可能な限り生活を継続できるよう、医療や介護などさまざまなサービスを提供するシステムです。
さまざまな角度から地域力を上げていくことが、今後の防災には非常に重要です。

防災・災害対策・減災は1日にしてならず。
備えあれば憂いなし。起こりうる災害に備えて、今できることを着実に行っていきましょう。

参考:厚生労働省ホームページ「地域包括ケアシステム」
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/)

2020年5⽉30⽇開催ALS Café webの内容を元に情報を再構成しています。
本コンテンツの情報は公開時点(2021年4⽉30⽇)のものです。

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