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監修:滋賀医科大学 脳神経内科 教授 漆谷真先生
砂川市立病院 脳神経内科 山内理香先生

2020.03.31

  • おでかけ

体験!バリアフリー観光伊勢神宮外宮を参拝してみた!
バリアフリー観光レポートvol.2

体験!バリアフリー観光伊勢神宮外宮を参拝してみた!

「一生に一度は伊勢参り」と江戸時代に流行するなど、古来親しまれてきた伊勢神宮。
交通機関も整っていない当時から、大変な労力を費やして全国から参拝者が訪れました。
車いすでも挑戦する価値があることは、神域へ一歩入ると感じられるはず。内宮(ないくう)に比べて参道が短く、正宮前の段差がないため、比較的参拝のバリアが少ない外宮(げくう)への、車いすの参拝を試みてみました。

目次

外宮(げくう)への参拝へいざ出発!

伊勢志摩バリアフリーツアーセンターの中山めぐみさん
伊勢志摩バリアフリーツアーセンターの中山めぐみさん

伊勢神宮は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)を祀る内宮こと皇大神宮(こうたいじんぐう)と、そこから6kmほど北に鎮座する外宮こと豊受大神宮(とようけだいじんぐう)などの総称です。

外宮に祀られた豊受大御神(とようけのおおみかみ)は、天照大御神の食を司り、衣食住や産業の守護神として崇められてきました。一般的に外宮から内宮へと参拝するのが習わしですが、外宮参拝だけでも十分に神様とのご縁が得られます。

今回は、伊勢志摩バリアフリーツアーセンターのスタッフで、お伊勢さん観光案内人としても活動している、中山めぐみさんのエスコートで外宮参拝へ。「神域内は全体的にフラットですし、距離も片道約400mなので、車いすの参拝でも大きな負担はありません」と中山さん。併設された駐車場から200~300m、JR伊勢市駅からなら500m余りに位置する表参道入口からスタートしましょう。

シミュレーション概要
ALS重症度分類4度で、人工呼吸器などの機器を含めた車いすをご利用の患者さんを想定。機器などの重量相当分を今回はペットボトルの水で加重しました。同行者はご家族1名とヘルパー1名のイメージです。

火除橋(ひよけばし)…場合によっては途中で反転を

火除橋。左側通行で進み、頂上部で車いすの向きを反転させ下ります。
火除橋。左側通行で進み、頂上部で車いすの向きを反転させ下ります。

参拝ルートの最初に現れる火除橋(ひよけばし)は、神域の入口にあたる場所。
車いす利用者用の駐車場がある北御門側から入る場合も、同じく火除橋がかけられています。左側通行で渡りますが、緩やかな弧を描く太鼓橋であるため、車いすでの利用には注意が必要だと中山さんはアドバイスします。「まずは介助者が後ろから押して橋の頂上部まで上がったのち、車いすの向きを反転させ、介助者が後向きになって下りるのがポイントです。
もう1人の介助者がいる場合、車いすの前から支えるとより安全に下りられます」と中山さん。

手水舎(てみずしゃ)…できる範囲で身を清める

手水舎での手水の様子
手水舎での手水の様子

火除橋を渡るとすぐ左手に手水舎(てみずしゃ)があり、ここで身を清めます。
「手前の溝に車いすの車輪が落ちないよう近づいてください。車いすを横づけすると無理がありません」と中山さん。手の自由のきかない方は介助者がサポート。「そのまま患者さんの手に水をかけると衣服が濡れてしまうので、少しでも手を外に出していただいてお水をかけてあげるといいでしょう」と中山さん。火除橋を渡った右手には清盛楠(きよもりぐす)と呼ばれる樹齢1000年以上の大木があるので、併せて立ち寄るのもいいでしょう。

参道…一の鳥居をくぐり、神域へ

車いすの目線からは、木々の生い茂る様子や、木漏れ日など、迫力ある景色が楽しめます。

車いすの目線からは、木々の生い茂る様子や、木漏れ日など、迫力ある景色が楽しめます。

手水舎の先に見えるのが一の鳥居。いよいよ神域の奥へ入っていきます。
ここから二の鳥居まで緩やかにカーブする参道は、鬱蒼と木々が茂り、森の中の散歩気分。ときおり野鳥のさえずりが響き、身も心も癒されます。

玉砂利は薄く敷き詰められ、車いすのタイヤが沈み込みません。
玉砂利は薄く敷き詰められ、車いすのタイヤが沈み込みません。

参道は全体的に小さな玉砂利が薄く敷き詰められているので、車いすの接地面が沈み込まず、進行は比較的スムーズ。
「介助者が力のある方なら前輪を少し浮かせると押しやすく、患者さんへの振動も抑えられます」と中山さん。
ヘッドレストの衝撃吸収用クッションなどを用意すると、さらに負担をやわらげられます。

古殿地(こでんち)…御敷地(みしきち)の大きさが体感できる

古殿地を前にすると、遷宮のスケールの大きさを感じられます。
古殿地を前にすると、遷宮のスケールの大きさを感じられます。

神楽殿の前を通り、しばらく進むと右手に古殿地(こでんち)が現れます。約1300年にわたって20年ごとに行われている式年遷宮(しきねんせんぐう)では、御敷地(みしきち)を改めて社殿などが一新されますが、2013年の式年遷宮までここに御正宮(ごしょうぐう)がありました。
「御正宮参拝時には奥行きなどを感じにくいので、ここでその空間の大きさを体感していただけます。奥に見える小さな建物は、御正宮の心御柱(しんのみはしら)があった中心を守る覆屋(おおいや)です」と中山さん。古殿地の左手にある、板垣越しに見える金色の屋根の建物が、現在の御正宮です。

御正宮…御幌(みとばり)の前で感謝の気持ちを捧げる

御正宮の前に段差がないのでスムーズにお参りできます。
御正宮の前に段差がないのでスムーズにお参りできます。

古殿地と隣り合うのが豊受大御神の鎮まる御正宮です。
唯一神明造(ゆいいつしんめいづくり)と呼ばれる日本古来の様式で建てられた御正殿(ごしょうでん)がありますが、参拝できるのはその手前の、鳥居がある外玉垣南御門(とのたまがきみなみごもん)を入ったところまで。
「階段や段差はないので車いすのままで入って行けますよ」と中山さん。
伊勢神宮での参拝は、二拝二拍手一拝がしきたりです。目の前にかけられている絹の御幌(みとばり)がときおり舞い上がることがありますが、神様が合図を送ってくれているのかも。

別宮遥拝所(べつぐうようはいじょ)…車いすで上がれない多賀宮(たかのみや)を遥拝

しめ縄と白い玉砂利部分が別宮遙拝所です。
しめ縄と白い玉砂利部分が別宮遙拝所です。

外宮の神域内には3つの別宮(べつぐう)があり、参拝する場合は御正宮のあとに立ち寄ります。なかでも格式が高いのが、豊受大御神の荒御魂(あらみたま)を祀る多賀宮(たかのみや)です。
「98段の石段があるので車いすでの参拝は難しく、土宮(つちのみや)・風宮(かぜのみや)も鳥居の奥まで入りづらいので、遥拝所から拝むといいでしょう」と中山さん。
古殿地のすぐ前にある、別宮への分岐点近くに設けられた、しめ縄と白い玉砂利の一角が遥拝所(ようはいじょ)です。

御饌殿(みけでん)、御廐(みうまや)…運が良ければ神馬(しんめ)と出会える

運が良ければ神馬に遭遇できるかも!?
運が良ければ神馬に遭遇できるかも!?

余裕があるなら少し寄り道も。御正宮の裏手へ回り込むと拝めるのが、御正殿の横にある御饌殿(みけでん)です。
「神様のための食堂にあたる場所で、外宮にしかない建物になります。毎日朝夕の2回、天照大御神などに食事を捧げる祭事が執り行われています」と中山さん。
その少し奥へ進むと、神様に仕える神馬(しんめ)のための御廐(みうまや)があります。「1日、11日、21日が神馬の参拝日。参拝日以外は、午前中を中心に不定期で御廐に入ります」と中山さん。この日は運良く、2頭のうちの笑智号(えみともごう)が姿を見せてくれました。

せんぐう館…外宮御正殿の実物大模型は圧巻

美しい建物が目を惹くせんぐう館のエントランス
美しい建物が目を惹くせんぐう館のエントランス
実物大の御正殿模型でスケールを体感
実物大の御正殿模型でスケールを体感
スロープと面積の広いエレベーター
スロープと面積の広いエレベーター
展望テラスからの景色
展望テラスからの景色

参拝の余韻に浸りつつ神宮への知識を深めるなら、「せんぐう館」へもぜひ立ち寄りたいもの。
2013年の式年遷宮を記念して、野鳥が遊ぶ勾玉池のほとりに建てられました。

「館内は車いすでも回れるよう、エレベーターやスロープが整備されています。特に御正殿の原寸大模型はぜひ見ていただきたいですね」と中山さん。

そのほか、パネルや映像・音声による解説、御神宝、御正宮の20分の1の配置模型、宮大工関係の展示など、見所が満載。パノラマウインドウから勾玉池を望む、展望テラスで一休みするのもいいでしょう。

「せんぐう館」DATA
電話:0596-22-6263
9時~4時30分(最終入館4時)
※時間の変更あり
毎月第4火曜休(祝日の場合は翌日)
※臨時休館あり
一般300円

内宮も参拝するなら

内宮も参拝するなら

内宮は御正宮の前に25段の石段があり、参拝ルートも片道約800mと長め。
それでも頑張って訪れてみたいという方には、車いすでの参拝を手伝う「伊勢おもてなしヘルパー」という内宮専用の有料サービスがあります。
詳しくは伊勢志摩バリアフリーツアーセンターへ。

NPO法人 伊勢志摩バリアフリーツアーセンター
電話:0599-21-0550
9:00~17:30(季節により変更あり)
木曜休(繁忙期は無休)

少し足を延ばすなら

少し足を延ばすなら

少し足を延ばすなら、内宮の鳥居前町「おはらい町」へ。
約800mの石畳の街道沿いに食事処や土産物店などが軒を連ね、縁日のように賑わいます。特に中心部の「おかげ横丁」は、江戸時代から明治時代にかけての建物が再現され、伊勢路らしい雰囲気が味わえます。

本コンテンツの情報は公開時点(2020年3月31日)のものです。

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