2024.09.01
- ライフスタイル
ALS患者さんは下記のような複数の理由から、
体重減少が多くの患者さんでみられます。
- ❶ 筋肉量が減る
- ❷ 摂食嚥下機能の低下や
疲労感から食事量が減る - ❸ 呼吸がしづらくなり、
呼吸での
エネルギー
消費が増大する
体重の減少をできるだけ小さくし、体重を維持することが、 その後の症状に大きな影響を与えることがわかっています。
できる限り食事からエネルギーを確保するために、普段から高エネルギー食&高脂肪食を意識することが大切です。
<参考>筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン2023 / 南江堂、
Shimizu T et al. Amyotroph Lateral Scler 13: 363, 2012
まずは1日に必要な
エネルギー量を
算出してみましょう
ALS患者さんの1日の推定エネルギー必要量の算出はとても複雑ですが、
ALSステーションでは自動計算でかんたんに算出することができます。
ALS患者さんは、ボトルの蓋を開けるときに力が入りにくかったり、箸が使いづらくなるなど、今までできていた動作が難しくなることもあります。それによって調理に時間がかかったり、調理するだけで疲労を感じることもあるかもしれません。
そんなときは食材や調理法を工夫することで、手指に負担をかける細かい動作をせずに短時間で、今までと変わらず調理をすることができますよ。
電子レンジを使うと火を使わずにすみ、調理時間の短縮にもなります。鍋やフライパンも使わないので、洗い物も楽に。
冷凍野菜などの冷凍食材は、切るなどの下処理がいらずにそのまま使えて、保存もできるので買い物に行けないときにも大活躍。
便秘が気になったら
腸の蠕動運動の低下などから、便秘に悩む患者さんもいます。野菜やいも類、豆類、果物などから食物繊維(プレバイオティクス)、ヨーグルトやみそなどの発酵食品から乳酸菌(プロバイオティクス)をとり入れましょう。
飲み込みにくいと感じたら
誤嚥性肺炎を防ぐためにも、飲み込みやすくするために、食形態を調整することが大切です。まずは食材を今までより小さめに刻んだり、ソースを多めにかけたり、とろみをつけると飲み込みやすくなりますよ。
調味料は小さじ1など計量しやすい分量で、
細かい調理動作がなく、最低限の調理
器具で
作れるので洗い物も楽ちん。
だけど本格的な味わいでしっかりおいしい!
エネルギーを確保しつつ、時短で作れるので
調理の疲労も少ない、
家族みんなで楽しめるレシピです。
ブロッコリーとえびの
チーズソースペンネ
チーズの香りが食欲をそそる、レンチンでかんたんにできるパスタです。水の代わりに牛乳をソースに使うことで、たんぱく質やエネルギーも補える、一石二鳥のレシピです。
栄養価(1人分)
- エネルギー
- 507kcal
- たんぱく質
- 36.2g
- 脂質
- 17.9g
- 炭水化物
- 58.5g
- 食物繊維
- 5.8g
- 食塩相当量
- 2.3g
材料(2人分)
- ペンネ(乾)
- 120g
- 冷凍むきえび
- 120g
- 片栗粉
- 小さじ1(3g)
- 冷凍ブロッコリー
- 120g
- ピザ用チーズ
- 80g
- 牛乳
- 300ml
- 顆粒コンソメ
- 小さじ1(3g)
- にんにくチューブ
- 小さじ2(8g)
ペンネ(ショートパスタ)
ショートパスタはフォークで食べやすく、急いで調理しなくても、スパゲッティなどのロングパスタに比べてのびにくいのでおすすめです。
作り方
- 耐熱ボウルや深めの大皿に冷凍むきえび、片栗粉を入れてまぶしたら、ペンネ、冷凍ブロッコリー、Aを加えます。
- 1にふんわりとラップをして電子レンジ(600W)で8分加熱します。一度取り出し、チーズを加えて混ぜ、ラップをせずにさらに4分加熱します。最後にもう一度全体を混ぜ合わせたらできあがりです。
- ★加熱時間はアルデンテの目安です。やわらかいパスタがお好みの場合は追加加熱してください。
バターチキンカリー
本格的な味わいのバターチキンカリーが、電子レンジでかんたんに作れます。生クリームやバターを使い、コクだけでなくエネルギーもアップできるのがポイントです。
栄養価(1人分)
- エネルギー
- 674kcal
- たんぱく質
- 21.5g
- 脂質
- 31.7g
- 炭水化物
- 81.8g
- 食物繊維
- 4.6g
- 食塩相当量
- 1.3g
材料(2人分)
- ごはん
- 360g
- パセリ(乾・あれば)
- 少々
- 鶏もも肉(唐揚げ用)
- 180g
- トマト水煮(ダイスカット)
- 200g
- 生クリーム
- 50ml
- カレールウ(フレークタイプ)
- 20g
- バター
- 10g
- 砂糖
- 大さじ1(9g)
鶏もも肉(唐揚げ用)
最近は唐揚げ用や小間切れなど、いろいろな用途にあわせて、カットずみの肉が売られています。カットする手間が省け、包丁やまな板も使わずにすむので洗い物の負担も減ります。
作り方
- 耐熱ボウルにAを入れて混ぜ合わせ(生クリームは少し残す)、ふんわりとラップをし、電子レンジ(600W)で6分加熱します。
- 一度取り出して混ぜ、再びラップをし、さらに2分加熱します。器に盛ったごはんにかけ、残しておいた生クリーム、パセリをトッピングします。
- ★カレールウはお好みの辛さのものをお選びください。辛味が苦手な方や、むせやすい場合は甘口タイプがおすすめです。
- ★鶏肉が食べにくい場合は皮をとり、キッチンバサミなどで小さめに切ってください。
- ※加熱時間は2人分の目安。
- ※栄養価は文部科学省/日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より算出。
- ※上記のレシピは、手指や調理の負担を減らすことを目的としている、摂食嚥下障害のない方向けのレシピです。
ALS患者さんは、手指が動かしづらい・力が入りにくい、疲労を感じやすいという場合があります。
調理を安全に行うために、キッチンまわりなどを工夫してみましょう。
休憩できるように
椅子を用意する
調理中に疲労を感じたときに休めるよう、椅子などをキッチンに用意しておくのがおすすめです。足が引っかからないように壁際におくなど、配置には気をつけましょう。
ボウルやまな板の下に
布巾や滑り止めシートを敷く
ボウルやまな板の下には、布巾や100円ショップなどでも買える滑り止めシートを敷くと、安定して調理しやすくなります。ボウルなどは少し大きめのものを使うと、こぼれにくいのでおすすめです。
監修 漆谷 真先生からのメッセージ
監修 漆谷 真先生からの
メッセージ
ALS患者さんにとって、体重減少を食い止めることは、その後の症状に大きな影響を与えるため、体重をなるべく維持することが重要です。
糖尿病などの合併症がある場合は注意が必要ですが、まずは「エネルギー摂取」を重視し、エネルギーを蓄えるつもりで食事をとりましょう 。
食事を作ること・食べることで筋肉・体重維持につながり、生活の質を向上させることが期待できます。本サイトに記載している工夫やレシピをとり入れつつ、無理のない範囲で調理や食事を楽しみながら、体重維持を心がけましょう。
内科学講座 脳神経内科 教授
漆谷 真 先生
本コンテンツの情報は公開時点(2024年9月1日)のものです。