2021.08.31
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ALS患者さんに
適した食事のポイント
連載:セミナーレポート「ALS Café web」 vol.3
適した食事のポイント
- 目次
ALS患者さんと栄養
ALS患者さんでは病初期から急激な体重減少が見られます。
体重減少が起こる原因として、筋力の低下、咀嚼・飲み込みの機能障害や疲労による食事摂取量の減少、食欲減退などがあります。加えて、ALSの病初期には特有な基礎代謝量の増加があり1)、ALSになる前と同等の食事摂取が出来ていても体重が減少する可能性があるため、病期に合ったエネルギー量を摂って体重を維持していくことがALSの進行抑制に重要です2)。
1)Dupuis L et al. Lancet Neurol. 2011, 10(1): 75-82.
2)Shimizu T et al. J Neurol. 2019, 266(6): 1412-1420.
エネルギーアップのための工夫
普段の食事に手軽に取り入れられる、エネルギーアップのための食事ポイントをご紹介します。
① ひと手間かける
食パンにジャムやバターをぬるなど、普段の食事にトッピングを加えることで、簡単にエネルギーアップができます(図1)。
② 選び方を変える
脂質が多く含まれている食品はエネルギーが高くなる傾向にありますので、食パンをクロワッサンに変えるなど、食品の選び方を変えるだけでもエネルギーアップが可能となります(図2)。
食品のエネルギーは、パッケージに記載されている栄養成分表示で確認できるので、比較してみてください。
③ 調理方法を変える
調理方法によりエネルギー量は大きく異なってきます。
炒めたり、揚げたりなど油を多く使用する調理方法でエネルギー量を高くすることが出来ます(図3)。
ご紹介した工夫を用いて、当院の献立をALS患者さん用にアレンジ(図4)しましたので具体的に見ていきましょう。
アレンジのポイントは、主菜のハンバーグを揚げ物であるメンチカツに変更していることです。デミソースも追加しているので、このアレンジだけで120kcalアップしています。さらに、バターやドレッシングなどの追加により合計で280kcalの増量、1食で850kcalの摂取が可能です。
④ 間食などを加えて食べる回数を増やす
間食を加えて、食べる回数を増やすことも、エネルギーアップには効果的です。
間食の内容としては、おにぎりやパンなどの主食、牛乳などの乳製品、ビスケットなどの菓子類、栄養補助食品が挙げられます。
⑤ 栄養補助食品の利用
栄養補助食品は栄養素がバランス良く含まれており、少量で高エネルギーを摂取することができます。栄養補助食品にはさまざまな種類があり、ジュースのような飲料やゼリーなどもあります。
基本的には甘い味の食品が多いのですが、中にはおかず風味のゼリーやスープなどもありますので、食事の一品としての活用も可能です。
参考:独立行政法人環境再生保全機構ホームページ
(https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/49/medical/medical04.html)
食べやすく美味しい調理のポイント
ALSの進行に伴い、咀嚼や飲み込みの機能が落ちてきたときの、食べやすくて美味しい調理のポイントについてご紹介します。
① 加熱調理で柔らかくすることで、食べやすくする
- ・食材を小さく切ることで火が通りやすくなる。
- ・肉や野菜は炒めるよりも一口大で煮込む。
② 油脂やとろみを利用して口の中でばらけやすい食品をまとまりやすくする
- ・焼き魚やチャーハンなどは、とろみのある餡をかける。
- ・野菜は茹でてから刻み、マヨネーズなどで和えたり、豆腐を用いて白和えにする。
これらの調理ポイントを踏まえたレシピについては、ALSの情報サイト「ALSステーション」にも掲載されていますので、是非参考にしてみてください(https://als-station.jp/recipe/index.html)。
新型コロナウイルス感染症と食品
テレビやインターネットなどで感染症予防に効果のある食品が取り上げられることがあります。しかし、残念ながら新型コロナウイルス感染症予防に効果のある食品や栄養成分の報告は今のところありません。一般的な感染症の予防として、免疫力を低下させないことが非常に重要です。
ALS患者さんでは体重減少を防ぐことが免疫力の維持にも繋がります。エネルギーをしっかり確保することに加え、栄養バランス良く摂取し、良好な栄養状態を維持することが何より大切です。
2020年5⽉30⽇開催ALS Café webの内容を元に情報を再構成しています。
本コンテンツの情報は公開時点(2021年08月31日)のものです。