TOP > 嚥下食レシピ > 総監修 清水俊夫先生から患者さんへのメッセージ

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ALSステーションにおいて、
「ALS患者さんとご家族のための嚥下食レシピ」の掲載が
スタートしてから約2年が経過しました。
そこで今回、レシピコンテンツの総監修をお願いしている
東京都立神経病院の清水俊夫先生に、
制作に関する当初の思いをはじめ、
ALSにおける栄養管理の重要性などについてお話しいただきました。

東京都立神経病院 脳神経内科 部長 清水俊夫 先生

東京都立神経病院
脳神経内科
部長
清水俊夫 先生

  「食べる楽しみ」ができるだけ長く続くように

人生にはさまざまな楽しみがあり、なかでも「食べる」ことは大きなウエートを占めています。ALSでは病状の進行に伴い、こうした楽しみを享受することが難しくなってしまいますが、私は以前から、経口摂取による「食べる楽しみ」ができるだけ長く続くようにしたいと考えていました。その一方で、経口摂取は、嚥下障害のある患者さんでは、誤嚥性肺炎を引き起こして生活の質(Quality of Life:QOL)を低下させることが懸念されるため、「食べやすいもの、誤嚥が生じにくいものを食べさせてあげたい」という臨床家としての強い思いがありました。また、患者さんの栄養状態の改善は結果的に延命につながることが示されていることから、「いかにカロリーの高いものを食べてもらって栄養状態をよくするか」を常に念頭に置いています。
レシピを活用された患者さんからは「カロリーがあって、おいしい」といった声が聞かれ、とても喜ばれています。また、新たに「ALS患者さんの1日の推定エネルギー必要量」が簡単に計算できるツールも掲載され、医療者の皆さんからも好評です。

  栄養管理の重要性と当院における取り組み

ALSでは診断前から体重減少が始まっていることがあります。そのため、病初期から適切な栄養管理を行い、体重を減らさないために食事をしっかりとることはALSの治療として重要です。当院には医師、看護師、管理栄養士などの多職種からなる栄養サポートチーム(Nutrition Support Team:NST)があり、入院中のALS患者さんに対しては、NSTで定期的に回診し、ALSに特化した指導を行っています。また、患者さんやご家族の希望があれば、退院後の食事に関する指導(栄養食事指導)も行っており、病状に応じた食事形態の工夫、経口摂取時の姿勢、1回の食事量などについて詳しく説明しています。

  患者さんへのメッセージ

ALS患者さんに胃瘻(いろう)造設を勧めると、「無駄な延命はしたくない」などと頑なに拒否されることがあります。しかし、胃瘻造設の目的は延命ではなく、QOLを向上させることであり、経口摂取との併用も可能であることを理解していただきたいと思っています。
また、ALSは難病であり、残念ながら現時点では根本的な治療法はありませんが、適切な栄養管理やリハビリテーションを行うことで、QOLの維持・向上が期待できます。「食べる楽しみ」をもち、希望は捨てずに、これらに向けて積極的に栄養管理に取り組んでいただきたいと考えています。

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